2023年12月18日、日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールを149億ドル(約2兆円)で買収することになりましたね。この日のUSスチール株(NYSE:X)は+26.09%と急騰しました。
粗鋼生産量は2020年時点で:(World Steel)
1 中国宝武鋼鉄集団 中国上海 1億1530万トン
2 ArcelorMittal ルクセンブルク 7850万トン
3 河鋼集団 中国河北 4380万トン
4 江蘇沙鋼集団 中国江蘇 4160万トン
5 日本製鉄 日本 4160万トン
なので、ここに27位のUSスチールの1400万トンが合算されると 5560万トンと3位になります。ただ、国別では中国10.1億トン、インド1億2484万トンが1位と2位で、日本はこのUSスチールを含めても1億324万トンと3位のままです。
ちなみに宝武鋼鉄集団は1995年のNHKドラマで山崎豊子原作の「大地の子」の鉄鋼会社のモデルです。上川隆也が熱演してましたね。新日鐵(ドラマでは東洋製鉄)が高炉技術を教えた会社がこんなに大きくなっています。
鉄鉱石の生産量は、1位が豪州で5億6450万トンで2位のブラジルや3位の中国の2倍以上の生産量となります。リオ・ティントやBHPなどは鉄鉱石を採掘しても大口だった中国国内の建設需要が見込めないので、今回の買収で米国の軍備用の需要を期待するかもしれませんね。
USスチールというと米国の再建ファンドのウィルバー・ロス氏を思い浮かべます。トランプ政権で商務長官になりましたが、元々はWRロス・カンパニーというレバレッジド・バイアウトのファンドをやっています。ロスさんがUSスチールの再建を手がけた90年代後半は米国の鉄鋼業界が退職金や年金やその他の福利厚生を含むレガシー・コストが嵩んでの業界再編でした。しかし、今回は中国包囲網を含めた経済安全保障の一環の側面が濃厚なので、ロスさんは特に絡んでいないかもしれませんね。
今回の買収の前に8月にクリーブランド・クリフス(NYSE:CLF)が72.5億ドルで買収提案し、USスチールはこれを拒否しています。今回はその2倍の買収額となります。経済合理性だけではない思惑があるのかもしれません。ちなみに、USスチールは鉄鋼王カーネギーが創始した名門ですが、生産量は低いんですね。