これは実話です。
欧州連合(EU)域内では日本の消費税に相当する付加価値税(VAT)がありフランスではTVA (la Taxe sur la Valeur Ajoutée)と言います。
私が経営する会社でフランスに子会社を作った時の話です。小さい会社なので、設立などは現地の法律事務所を活用したものの、ほとんどの作業は勉強も兼ねて自分で行っていました。
中小企業が中国や東南アジアに海外進出することはあっても、何の縁もゆかりもない欧州に、しかも完全に単独で進出するのは珍しいケースです。
子会社の設立登記が終わって進出して間もない頃、事務所に1通の書簡が届きました。
Enregistrement Intracommunautaire (コミュニティ内の登録)というタイトルで発行人はEUR SERVICE Quartier Européen(ユーロ通貨サービス・ヨーロピアンクォーター)というベルギーの組織で、TVA(付加価値税)番号の発行に390ユーロ支払えという請求書です。
ん?何だこの組織?
内容を見ると、EURという透かしの紙に、登記上の住所も社名もSIRETという法人番号のすべて正しいのです。
しかし、「消費税の納税番号発行するから390ユーロ払え、というのは如何にも怪しい。税務当局からすれば税金取りたいんだから、普通タダで納税番号通知してくるだろ!」と思ったわけです。
その頃、同時に会計事務所を選定していました。2社くらいにサービスの料金や会計事務作業の流れなどを確認し、やりやすい方を選ぶという段階でした。
試しに「こんな請求書が届いたがどうも怪しい。詐欺なのではないのか?これはフランスの業者ではなくベルギーのようだが欧州連合(EU)は消費税を払う納税番号を取得するのに、カネが必要なのか?日本ではあり得ない。これを調べて、支払う必要があるのかどうか会計士として意見が欲しい。その対応で、あなたのところに会計の依頼をするかどうか考える。」
このように宿題を出したわけです。1社はなかなか回答して来ず、もう1社はフランスの地元の税務署に行き、調べてきました。結論は、「これはあなたが言うようにSPAM(詐欺)なので支払ってはダメで無視してください」ということでした。
私は、よくある「ナイジェエリア詐欺」やその他の「遺産を受けとってくれ詐欺」などには鼻が聞く方で、こういう美味しい話には引っかからないようにしてきました。
しかし、先進国の欧州であっても、しかも欧州連合(EU)の税務当局や正式業者のような顔をして騙そうとする輩がいるのだな、と注意をするように心を新たにした訳です。
読者の皆さんが、海外に直接投資をして会社を作るケースというのは決して多くはないと思いますが、日本を一歩出れば、詐欺を働く輩はうじゃうじゃいることを忘れないでくださいね。